ローゼンブラックのさらなるつぶやき

とにかく色んなこと書いてます。twitterID:shimotsuki_6624

単位の深イイ話(2/3)

今回は、前回紹介した7つの基本単位のうち、最も広く使われているメートル、秒、キログラムの話をしていこうと思います。いわゆる力学で使うMSK単位系ですね。

 

秒の定義の経緯

時間の基本単位は「秒」としています。かつては、地球の自転と公転をもとにした定義、つまり、地球の一回転の86400分の1を1秒として定義されてました。これを天文時といいます。しかし、地球の自転は一定ではないことがわかり、現在では原子の振動をもとに、より高精度な定義をしております。それは、セシウム133(133 Cs)の原子の基底状態の二つの超微細準位の間の遷移に対応する放射の周期の91億9263万1770倍に等しい時間とされ、これを原子時といいます。原子時は下の写真のような原子時計を用いております。しかし、原子時と天文時とではずれが生じているので「うるう秒」を挿入することで調節しています。

f:id:kuroshimotsuki6624:20170804204212j:image

(日本標準時グループのHPより引用http://jjy.nict.go.jp/mission/page2.html )

 

メートルの定義の経緯

皆さんがよく長さの単位としてよく使うメートルという言葉ですが、ギリシャ語で「ものさし」という意味から由来されています。メートルの国際基準化のきっかけになったのは1771年フランス科学アカデミーで単位を世界共通で使うためには自然科学に根拠を持ったものにすべきという議論が起こったところから始まっております。このとき、以下の3つの案があったそうです。

 

①地球の北極から赤道までの子午線の長さの1000万分の1

②赤道の周長の4000万分の1

③北極45度の地点で半周期が一秒になる振り子の紐の長さ

 

しかし、②は赤道には海上区間や熱帯地域が多く測量が困難であること、及び③は重力が位置によって異なる点や定義をするのにわざわざ時間を使わなければならない点で却下され、①のみが残りました。

これを受けて、1795年にはフランスの天文学者ニコラ・ルイ・ド・ラカーユによる測定値を元に黄銅製のメートル原器が製造されました。その測定値はパリと同一経線上にあるフランスの北岸ダンケルクからスペイン南岸のバルセロナまでの長さを三角測量を繰り返して行なった結果から求めたものです。その4年後、正確な1mを表す国際メートル原器が製造されたのです。

しかし、測定器などの「物」を基準にした定義では、紛失や破損の恐れがあるほか、国際メートル原器と比較しなければ校正できないという問題があるわけですね。世界中どこで測っても同じになる物理現象に基づいた普遍的な定義が望ましいということですね。

そこで1983年には光速度が一定であるということを利用して光の速度を基準とする現在の定義が採用されたわけですね。というのも時間のところで説明した「秒」の正確な定義が採用されたのも大きいですね。現在1mは「1秒の299792458分の1の時間に光が真空中を伝わる距離」と定義されました。ネタバレしてしまいますが、メートルは7つの基本単位で最も新しい現在の定義なんですね。

 

キログラムの定義の経緯

現在の質量の単位はキログラムとなっております。正直グラムじゃないの?と思う方もいるかもしれません。私も実のところ、疑問に感じております。結論から言いますと、キログラムは未だに下の写真のような、国際キログラム原器という原器を使って定義をしているので、まだ正確な物理的根拠に基づいた定義がされてないわけなんですね。この計器は、白金を主成分とする合金でできた、直径高さともに39mmの円柱であり、パリ郊外のセーヴルの国際度量衡局に真空で保管されております。40個の複製がされており、日本ではNo.6が配布され、茨城県つくば市にある独立行政法人 産業技術総合研究所に保管されております。先ほども申し上げたように、原器による基準の決め方は原器そのものの紛失や破壊、変質によって信頼性失われるので問題になるんですね。

f:id:kuroshimotsuki6624:20170804205707j:image

(http://www.aist.go.jp/aist_j/aistinfo/photoarchives/pa20160608001.html 独立行政法人 産業技術総合研究所のホームページより引用)

やはり、キログラムにも時間に関係なく不変で明確な根拠が必要ですね。多分、驚かれた方もいるのではないでしょうか?

現在キログラムの基準として提案されているのは次のような例があります。

①一定個数のSi原子の質量

②金の原子を蓄積し、これを中性化するのに必要な電流による定義

③かつてプランク定数とキログラムを関連づけることでアンペアの定義に用いたワット天秤(次回やります)を用いて定義する

④光子エネルギーと等しい静止エネルギーをもつ物体の質量を1キログラムとする

他にもありますが、やはり、他の基本単位、特に電気系の単位と関連づけて定義させる方法が多いですね。

 

次回は、残り4つの基本単位の紹介をします。