ローゼンブラックのさらなるつぶやき

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雷対策の話(避雷器編)

ごあいさつ

こんばんは、ブログの更新はほぼ1ヶ月ぶりですかね。この空白の1ヶ月間は院試と学会の準備に追われておりましたが、ようやくひと段落が付きました。これにより、投稿を楽しみにしてくださった皆様には久々の投稿になってしまったことを深くお詫び申し上げます。まぁ、ホントはここでお詫びしてもしょうがないんですけどね。

 

今日のテーマ

さて、長い前置きは置いといて、今回も電気工学ネタを呟いていきたいと思います。前回は雷の恐ろしさとともに、落雷対策するのに必要なそもそもの雷の基礎知識を養うために、落雷のメカニズムを紹介しました。しかし、高度情報化社会の今だからこそ、雷から機器・設備を保護することが必須になってきます。そこで今回は落雷に対処する方法の一つを具体的に紹介しようと思います。

 

避雷器

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避雷器はある値以上の電圧がかかると抵抗値が小さくなって大電流を流すことで過電圧を抑制するという仕組みになっております。最も身近なところですと、写真の電柱の最上部に付けられていますよね。避雷器の種類には、高圧用のものと低圧・弱電用のものがございますが、主に前者は電力送電設備などを保護して停電事故の発生を防ぐもので、後者は身近で使われている電気電子機器・通信機器などの保護をする役割を持つものですが、今回は避雷器についてわかりやすくご紹介するため、高圧用について触れようと思います。

 

1.避雷器の構造

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避雷器の構造は、図のようにセラミックス半導体素子(わかりやすく言えば抵抗器みたいなものですね)として酸化亜鉛(ZnO)を主成分として何枚も重ねたものを支持棒と支持板を用いて締め付けられたものを一つの単位として制作し、それがコイルばねで支持する構造となっております。

 

2.避雷器の要求事項

避雷器は、電力系統に雷などの過電圧が発生したときに速やかに過電圧を抑制し、雷電流を大地に流した後、自力で絶縁状態に回復させなければなりません。その必要条件は、

①絶縁性能

②保護性能

③動作責務能力

の3つです。正直、想像つきにくいと思うのでもう軽く説明いたします。つまり、常時の電圧に耐え、過電圧を一定の値まで低減し重要な機器を保護でき、かつ過電圧消滅後も速やかに常時の状態(絶縁状態)に復帰できることが必要となってくるわけです。これは、抵抗器の素材にとっては常時は絶縁体であるが、緊急時には導体として働くことができることが求められるわけですね。

 

3.避雷器の電流-電圧特性

現在よく用いられているのはZnO素子を用いた避雷器ですが、かつては、SiCの素子を用いた避雷器を用いておりました。そこでSiCとZnO素子のそれぞれの特性をグラフにしたものが下の図です。

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SiCは電流を上げると、電圧も徐々に上がってしまいますので、連続使用すると熱破壊が起こってしまうので、直列ギャップを用いて絶縁させる必要があるわけですね。一方、ZnOはある一定以上の電流が流れると、ある電圧まででほとんど停滞することがわかりますね。図のように非線形としてあらわれるということは、先程申し上げた通り、導体として働いているわけですね。ただ、ZnO避雷器には当初ギャップがなかったので素子の寿命を評価する必要があるわけですね。現在では経験的な値でしかわかっておりません。

 

4.避雷器の高性能化

 もちろん、先程の図は高性能であるということを証明するものではありません。電気的な性能だけでなく、壊れにくく安全性が高いことも必要条件となっております。そこで、高性能化させるには次の方法があります。

①ZnO素子に添加物の濃度を制御

②ZnO素子の代わりにポリマー避雷器を用いる

まず、①について説明します。添加物というのは要するに絶縁物質のことです。この量を制御することで、素子に流れるサージ電流を増加させ、復帰を早めることができます。ただ、増加させるだけでなく、電流が素子のどの場所でも流れやすいように均等化も考えていかなければなりません。

②のポリマー避雷器は非常に軽量なだけでなく耐汚損性、耐震性、放圧時の安全性に優れた構造となっているので今後の主流になっていくであろう避雷器になっております。

 

おわりに

久々の更新でした。落雷の頻度が最も多い時期は過ぎて行きました。とはいえ、前回もご紹介したように湿度などの条件が揃えばいつでも起こりうるのです。そこでこの回では身近なところでどう対策しているがという話をしていきましたが、次回も身近なところで用いる雷対策機器を紹介しようと思います。

 

参考文献

電気計算 2016年8月号」電気書院(写真以外の図は全てここから抜粋)

「よくわかる送配電工学」田辺茂著 電気書院