電気磁気学で用いる単位の話(1/2)
はじめに
3日ぶりですね。現実には、分野によって前回紹介したSI基本単位を組み合わせた組立単位がよく用いられております。そこで今回は、私が専門としている電気系で使われる単位についてご紹介したいと思います。
電流と電荷
SI単位系ではこの電流、つまりアンペアが基本単位になっています。そのほかの電圧、抵抗、電荷量などの単位についてはこのアンペアから導かれるわけです。今回は、アンペアの定義は前回紹介したので割愛しますが、電流はいかなるものかついて説明させていただきます。電流は電荷が移動する流れのことを言います。
ここで、電荷という言葉が出て来たので少しご説明いたします。あらゆる物質や原子、そして原子の周りにいる電子などが帯びている電気の量のことを指します。電荷には正負二つの状態が存在するのですが、物質の定常状態では、その量が等しく中性を保たれます。しかし、何らかの原因でその量のバランスが崩れると、その物質には帯電が起きてしまいます。
電流の方向は正電荷の移動方向と定義されているので、電子は負電荷なので流れる方向は電流と逆方向になります。
そして、電荷にもクーロン[C]という単位がつきます。そもそも電流というのは、下図のようにある導体断面を1秒間に1クーロン[C]の電荷が通過した量を1[A]という感じで考えているんですが、SI単位的には逆で、「導体断面を1アンペア[A]が流れたとき、1秒間に運ばれる電気量を1クーロン[C]」としています。つまり、先に電流の大きさを測ってから電荷がわかるんですね。
電流の向き
電圧
次に、電圧についてご紹介します。電圧といえば電流を流そうとする電圧の単位は皆さんご存知ですよね、ボルト[V]です。由来は、2枚の金属板と電解質の水溶液から成る一次電池、ボルタ電池を発明したヴォルタという人から来ています。この定義は、「1Vは1Aの電流が流れる導体の2点間において消費される電力が1Wであるとかのその2点間の電圧」とされています。ここで1Wがありますから、いわゆるMKSA単位系の基本単位を全て使うことになります。ボルトを全て基本単位に直して書くと、(電力)=(電流)×(電圧)の関係先を使うと、Wはですから、
となるわけですね。
電気抵抗
多分、これも義務教育ですでにやっているかと思われます。いわゆるオームの法則で、電圧を電流で割った値が抵抗ですよね。では抵抗というものはもともと何であるかについて見ていきましょう。
どの物質にも電圧を加えると導体内に電界、つまり電気的な力が発生します。それにより、電荷が力を受けて移動し電流が流れます。この電荷をキャリアと言います。そして、移動キャリアの速度は、その段階の大きさに比例するのですが、その時の電流はキャリアの数や物質固有のキャリアの移動のし易さによって決まってくるわけですね。これが抵抗になるのです。
抵抗のSI的定義では「1Ωは、1Aの電流が流れる導体2点間の電圧が1Vである時のその2点間の抵抗」としています。SI基本単位で表すと、
となります。
電力
電気の世界でも、電力として、力学と同じワット[W]を用います。同じ単位を用いるということは電力と力学で用いるワットは関連性があるのか?という疑問を持っている方もいらっしゃるかと思います。おそらく、先程の電圧の紹介しているあたりで待った方もいらっしゃるかと思います。ここで単位の話をする前に電気エネルギーと運動エネルギーの関係について話します。
電力というのは簡単に言うと電気エネルギーによってなされる仕事のことを指します。電界によって力を受けた、動き回れる電子(以下、自由電子)は図のように、導体中を構成している原子と衝突しながら流れていきます。
この時、構成原子に力学的なエネルギーを受けて振動し、その分だけ自由電子の運動エネルギーは失われるのです。この失われた分は熱に変換されてしまいます。このような熱をジュール熱と言います。こうして見ると、同じワット[W]を用いる理由がわかりますね。
なので、1Wは1Vの電圧をかけた時に1Aの電流が流れたときの電力という感覚でも間違いはないのですが、定義としては「1秒あたりに・変換・使用・消費されているジュールで表したエネルギーの率」としています。電力はつまり単位時間あたりのエネルギーの発生量のことを言うんですね。
次回はただの抵抗だけでなく、いわゆるコンデンサやコイルなどの電気素子に用いる単位の話をします。