ローゼンブラックのさらなるつぶやき

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測定の深イイ話

はじめに

どうも。今回から本格的にマニアックな話をしていこうかと思います。理系で欠かせないものといえば何と言ってもやはり実験ですよね。実験といえばもちろん測ることが必須であります。現象や物事を正確に測り、測った結果を正しく評価するということが測定実験の基本であります。今回はそんな測定の基礎についてご紹介致します。

 

測定とは

普段何気なく使っている「測定」という言葉ですが、厳密に言いますと「現象から定量的な情報を取り出す操作」のことを言います。要するに、とある科学的な現象から数字を出すということです。言われてみれば当たり前かもしれませんが、単純に数字を決めるだけではありません。実際、JISによりますと、「ある量を、基準として用いる量と比較して数値または符号を用いて表すこと」とあります。ここで、「基準として用いる量」というものがメートルやキログラムとか言った単位ということになるわけです。つまり、基準量を決めてそれを単位として比較して数値を決めるというわけですね。

今後の話をわかりやすくするために次の2つの用語の説明にも入ろうと思います。測定量や測定値も言葉の意味が少し違ってくるわけですね。

測定値・・・測定によって求めた値

定量・・・測定しようとする量

これだけ聞くとイメージしにくいかもしれませんが、要は測定値というのは実際に測定器などを使ってそれが示した値のことを指し、測定量というものは我々が求めている目的の数量の事を示しています。測定量というものは、測定値や単位を元に比較されるものなんですね。このように、何らかの目的を持って結果を用いて比較や考究などをする事を計測と言います。

 

測定の種類

実は測定にはいくつか種類があって、さらに名前まであるのです。

①零位法

零位法は、測定量を、別に用意した大きさを調節できる同種類の基準量と平衡させ、両者の差を検出する計器がゼロを示すようにして、その時の基準値の大きさから測定値を知る方法です。つまり、天秤のように、両者が等しくなるように調節して、別に用意した既知の量からそのまま対象を測定するというものです。我々電気屋がよく行う例としては写真で示したようなブリッジ回路の平衡条件から未知の抵抗を出すというものです。

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ここでGは検流計なのですがこれがゼロを示す、つまり電流が流れない条件、あるいは両者をつなぐ接続点での電圧が等しい条件を導き、既知の抵抗から測定したい抵抗を測定するわけです。

例えば、R1とR2とR4が既知であったとします。R3を知りたい場合、Aの電圧とBの電圧が等しくなるような条件から導くわけです。もしこの条件が等しければ、上2つの抵抗と下2つにかかる電圧降下は並列回路で等しくなる性質、また、それぞれ直流につながっている抵抗の分圧の条件から導くことができます。このように、零位法というのは両者の差をゼロにするという調節という行為が測定する上での味噌になるわけです。

 

②偏位法

偏位法は、測定量を原因とし、その直接の結果として生じる指示値から測定量を知る方法です。要するに、測定したい量がそのまま測定器が示す値の通りの値として測定するというシンプルな方法であるです。最も簡単ですぐに終わる測定方法なのですが、致命的な欠点があり、簡単に言って仕舞えば精度の高い測定ができないという点であります。言われてみれば当たり前かもしれないですが、その通りです。この方法は測定器を構成する要素の変動を考慮しないので、それを考慮できるように測定器の校正を行う必要があります。

 

③補償法

補償法は、測定量からそれにほぼ等しい基準量を引き去り、その差の小さい量を測って測定量を知る方法です。つまり、非平衡状態の時の測定量と平衡状態の時測定量の差を知るという方法です。同様にして先ほどのブリッジ回路で考えると、もし検流計に電流が流れたとしても平衡状態と平衡状態からのズレを知れば、その時の測りたい抵抗を求めることができます。

差の小さい量を測ればいいので、結果として高精度測定することができるのです。

 

④置換法

定量と基準値を置き換えて2回の測定結果から測定量を知る方法です。つまり、あらかじめ用意しておいた1回目の測定量を基準値として正しく設定し、対象に差分を加えた2回目の測定量から正しい測定値を得るということです。天秤で例えると、1個だけの普通サイズの分銅を乗せた時の重量を基準とし、同じ天秤の皿に小さな分銅を少しだけ乗せたときの重量をはかり、小さな分銅の重量を知るという行為です。

この方法の利点としては計測器が同じであれば、計測器特有の精度を考慮しなくても良いという点があります。

 

⑤直接測定と間接測定

最後に測定の大まかな分類として直接測定と間接測定とがあります。まず、直接測定は測定量と同種の基準として用いる量と比較して行う測定です。わかりやすく言うと、同じ単位を用いているもの同士で比較を行うと言うことです。これに対して、間接測定は測定量の一定の関係にある、いくつかの要素の量について測量を行って、それらの要素の測定値から関係式を使って測定量を導き出す方法です。つまり、測定対象が測定器と同じ単位でなくとも、関係式さえ使えば測定量を知ることができるということです。我々電気屋がよくやるのは抵抗測定でオームの法則使うという点です。抵抗を測定したい時に、直接テスターで抵抗を測るのではなく、電流計や電圧計を用いてそれらの計測値からオームの法則を使って計算して抵抗値を知るという方法です。

 

おわりに

というわけで、理系の人なら当たり前の感覚で行なっている測定の薀蓄話を長々してしまいましたが、当たり前の感覚を完全に捨てるとこのように深い話になっていくわけですね。もちろん、当たり前のことができるには越したことはないですが、たまには当たり前の感覚を捨てるというのもいかがでしょうか?次回はもう一つ、測定するのに用いる単位の深イイ話をしていこうと思います。ありがとうございました!