ローゼンブラックのさらなるつぶやき

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電気磁気学で用いる単位の話(2/2)

ではでは、前回に引き続き、電気系で用いる単位について残りをご紹介致します。

 

コンデンサの静電容量

抵抗以外の電気素子として、コンデンサというものがあります。

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コンデンサの中身は上図のように導体平板2枚を平行に配置し、その間に電圧を加えると電界が発生し、各平板に電荷が蓄積されるという仕組みになっております。これら電荷を貯めたり放出したりすることができるのです。そしてコンデンサの持つ電荷を蓄積できる量を静電容量と言います。静電容量は電極、つまり導体平板の面積と電極間の物質固有の誘電率に比例し、平板間の長さに反比例します。単位はファラッド[F]を用います。

定義としては、「1[F]は1[C]の電気量を充電した時に1V生じる静電容量」としています。SI基本単位のみを用いて表すと、

F=m^{-2}kg^{-1}s^4A^{2}

という単位で表されます。

実際に電子工作などで用いる素子はμF単位と、とても小さい値の静電容量のものが使われます。

ここで、平行平板コンデンサは正負の極性関係なく使うことができますが、写真のような電解コンデンサは正負の極性が決まっているので注意しなければなりません。写真のリード線が長い方に正の電圧がかかるように用います。

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磁気に関する法則や単位

最後に磁気に関する単位について紹介します。ここで話をわかりやすくするために、単位を紹介する前に磁気に関する法則の紹介を行いたいと思います。

アンペールの法則

磁界は、下図のように電流を流す磁界が渦巻き状に発生するのですが、渦巻く方向は、電流の向きを右ねじの進む方向として右ねじの回る向きになります。これを右ねじの法則と言います。

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この時に発生する磁界の大きさをHとし、電流をI、電流からの距離をrとすると、

H= \frac{I}{2{\pi}r}

となります。これをアンペールの法則と言います。ただし、この式はあくまで特別な場合であって、正式なアンペールの法則は「任意の閉曲線を設けたとき、その閉曲線上でできる磁界の強さの線積分値は、その閉曲線内を貫く電流に等しい」としています。上の図だと半径がrの円周を閉曲線としているわけですね。

 

②電磁誘導

磁石によって作られる磁力線を束にしたものを磁束と言います。図のように磁石を動かすと、コイル内を貫く磁束、いわゆる鎖交磁束が変化するのでそれによって電圧が生じます。これを電磁誘導と言います。この時に発生する電圧を誘導起電力と言いますが、その大きさは鎖交磁束の変化分に比例します。これがファラデーの電磁誘導の法則です。そして誘導起電力にも向きがあり、磁束の変化を妨げるように発生するのです。

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③磁束

磁束にも単位があり、ウェーバー[Wb]を用います。定義では、「1回巻きの閉回路と鎖交する磁束が一様に減少して1s後に消滅するときその閉回路に1V生じさせる磁束」としています。これは、先程のファラデーの誘導起電力から定義されます。SI基本単位を組み立てて書くと、

Wb=kgm^2s^{-2}A^{-1}

となるわけですね。

 

④磁束密度

密度がついてるからわかりますよね?磁束の単位面積当たりの面密度です。単位はテスラ[T]ですね。Fate/Grand Orderをやっている方ならご存知かもしれませんが、交流電流の発明者、ニコラ・テスラから来ています。直流側のエジソンと交流側のテスラの電流戦争は有名ですよね。

話が脱線してしまいましたが、先程のウェーバーTm^2と書くことができますね。

 

⑤インダクタンス

先程のファラデーの電磁誘導の法則で、鎖交磁束が変化すると誘導起電力も磁束の変化を妨げる方向に変化するという説明をしました。これはコイルの巻線電流を変化させることでも同じ働きをします。巻線電流を変化させるともちろん鎖交磁束も比例して変化します。要するに、誘導起電力の変化分は巻線電流の変化に比例するわけです。この時の誘導起電力は比例定数を用いて

V=-L\frac{dI}{dt}

となるわけです。この比例定数Lを自己インダクタンスといいます。

自己があるということはコイルが二つ以上の場合もあると勘付きますね?

磁気的に結合した2つの巻線のうち、一方の電流を変化させるともう一方の巻線に誘導起電力が生じます。一方の巻線の番号を1、もう一方を2とすると、

V_2=-M \frac{dI_1}{dt}

です。この比例定数Mを相互インダクタンスと言います。それぞれの自己インダクタンスとの関係は次の関係があります。

M=k \sqrt{L_1L_2}

kを結合定数と言い、0と1の間の値を取ります。

 

ここで、インダクタンスにも単位があり、ヘンリー[H]を用います。1Hは、「毎秒1Aの割合で一様に変化する電流が流れるときに1Vの起電力を生ずるインダクタンス」としています。

 

おわりに

電気の単位について紹介しましたが如何でしょうか?前半は日常生活で割と馴染みの深い単位でしたが、今回はあまり馴染みがない単位でしたね。ただ、どの単位にも共通して言えるのが発明者の名前から取っているっていうことでますます馴染みがないかと思われますが、是非是非、電子工作をを扱う趣味を持っている方などには知っておいてほしい単位ですね。

 

次回は考え中です。ありがとうございました。

 

電気磁気学で用いる単位の話(1/2)

はじめに

3日ぶりですね。現実には、分野によって前回紹介したSI基本単位を組み合わせた組立単位がよく用いられております。そこで今回は、私が専門としている電気系で使われる単位についてご紹介したいと思います。

 

電流と電荷

SI単位系ではこの電流、つまりアンペアが基本単位になっています。そのほかの電圧、抵抗、電荷量などの単位についてはこのアンペアから導かれるわけです。今回は、アンペアの定義は前回紹介したので割愛しますが、電流はいかなるものかついて説明させていただきます。電流は電荷が移動する流れのことを言います。

ここで、電荷という言葉が出て来たので少しご説明いたします。あらゆる物質や原子、そして原子の周りにいる電子などが帯びている電気の量のことを指します。電荷には正負二つの状態が存在するのですが、物質の定常状態では、その量が等しく中性を保たれます。しかし、何らかの原因でその量のバランスが崩れると、その物質には帯電が起きてしまいます。

電流の方向は電荷の移動方向と定義されているので、電子は負電荷なので流れる方向は電流と逆方向になります。

そして、電荷にもクーロン[C]という単位がつきます。そもそも電流というのは、下図のようにある導体断面を1秒間に1クーロン[C]の電荷が通過した量を1[A]という感じで考えているんですが、SI単位的には逆で、「導体断面を1アンペア[A]が流れたとき、1秒間に運ばれる電気量を1クーロン[C]」としています。つまり、先に電流の大きさを測ってから電荷がわかるんですね。

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電流の向き

 

電圧

次に、電圧についてご紹介します。電圧といえば電流を流そうとする電圧の単位は皆さんご存知ですよね、ボルト[V]です。由来は、2枚の金属板と電解質の水溶液から成る一次電池、ボルタ電池を発明したヴォルタという人から来ています。この定義は、「1Vは1Aの電流が流れる導体の2点間において消費される電力が1Wであるとかのその2点間の電圧」とされています。ここで1Wがありますから、いわゆるMKSA単位系の基本単位を全て使うことになります。ボルトを全て基本単位に直して書くと、(電力)=(電流)×(電圧)の関係先を使うと、Wはm^2kgs^{-2}ですから、

V=m^2kgs^{-2}A^{-1}

となるわけですね。

 

電気抵抗

多分、これも義務教育ですでにやっているかと思われます。いわゆるオームの法則で、電圧を電流で割った値が抵抗ですよね。では抵抗というものはもともと何であるかについて見ていきましょう。

どの物質にも電圧を加えると導体内に電界、つまり電気的な力が発生します。それにより、電荷が力を受けて移動し電流が流れます。この電荷をキャリアと言います。そして、移動キャリアの速度は、その段階の大きさに比例するのですが、その時の電流はキャリアの数や物質固有のキャリアの移動のし易さによって決まってくるわけですね。これが抵抗になるのです。

抵抗のSI的定義では「1Ωは、1Aの電流が流れる導体2点間の電圧が1Vである時のその2点間の抵抗」としています。SI基本単位で表すと、

Ω=m^2kgs^{-3}A^{-2}

となります。

 

電力

電気の世界でも、電力として、力学と同じワット[W]を用います。同じ単位を用いるということは電力と力学で用いるワットは関連性があるのか?という疑問を持っている方もいらっしゃるかと思います。おそらく、先程の電圧の紹介しているあたりで待った方もいらっしゃるかと思います。ここで単位の話をする前に電気エネルギーと運動エネルギーの関係について話します。

電力というのは簡単に言うと電気エネルギーによってなされる仕事のことを指します。電界によって力を受けた、動き回れる電子(以下、自由電子)は図のように、導体中を構成している原子と衝突しながら流れていきます。

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この時、構成原子に力学的なエネルギーを受けて振動し、その分だけ自由電子の運動エネルギーは失われるのです。この失われた分は熱に変換されてしまいます。このような熱をジュール熱と言います。こうして見ると、同じワット[W]を用いる理由がわかりますね。

なので、1Wは1Vの電圧をかけた時に1Aの電流が流れたときの電力という感覚でも間違いはないのですが、定義としては「1秒あたりに・変換・使用・消費されているジュールで表したエネルギーの率」としています。電力はつまり単位時間あたりのエネルギーの発生量のことを言うんですね。

 

次回はただの抵抗だけでなく、いわゆるコンデンサやコイルなどの電気素子に用いる単位の話をします。

 

単位の深イイ話(3/3)

どうも。早速ですが前回のMSK単位系について書いた記事でお気に入り登録された方が一人いらっしゃったようです。ありがとうございます!

今回は残りの4つの基本単位について紹介いたします。

 

カンデラの定義

まず光度というのは、点状の光源からある方向へ放射される光の明るさを言います。そんな光度の基本単位はカンデラ[cd]が用いられます。由来はラテン語でキャンドルとカンテラと同じ語源です。これも、実は国際基準化されているわけですね。というのも、人間が感じる光の明るさというものは、もちろん十人十色ですからね。

現在のカンデラは「周波数540×10^{12}Hzの単色反射を放出し、所定の方向におけるその放射強度が1/683ワット毎ステラジアン[sr]である光源の、その方向における光度」と定義されております。この定義で示した周波数は緑色近くの可視光で人間の目にとって最も視覚の感度が高いところなんですね。ここで、ステラジアンという単位についてお話しします。下図に示すように、ステラジアンは立体角に関する単位で球の半径rの平方、つまり一辺がrの正方形と等しい面積の部分の中心に対する立体角です。立体角についても補足しましょう。簡単にいうと今まで単に「角度」と言っていたものは平面角と言って長さのような概念を示してましたが、立体角の場合は面積のようなものと考えるとわかりやすいでしょう。

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立体角ステラジアン

 

 

モルの定義

モル[mol]といえば化学における現象を理解するのによく用いられていますよね。

定義では「0.012キログラム(12グラム)の炭素12の中に存在する原子の数と等しい構成要素を含む系の物質量」とされています。1971年に定義されたものなので現在使われている基本単位の中では最も新しく生まれた基本単位なんですね(定義に限ってはメートルが最新)。

 

ケルビンの定義

熱力学温度、いわゆる温度の基本単位はケルビン[K]になっております。「1ケルビンを水の三重点の熱力学温度(0.01℃)の1/273.16倍とする」と定義されています。表記に関して注意しておきますが、ケルビンには⚪︎や度は付けないことになっています。一般的に用いられているセルシウス度C(摂氏)とは次の関係があります。

C=K-273.15

それからこれは皆さんには馴染みはないかもしれないですが、気候の分野で使われるファーレンハイト度F(華氏)ではKと次のような関係があります。

F=9/5K-459.67

 

 アンペアの定義

さぁ、いよいよ我々電気屋のお待ちかねです。電気の基本単位といえばもちろんアンペア[A]です。由来は、これは電磁気の話でも出てくるんですが、電流の周りに発生する磁場との関係を導いたアンペールの法則を発見したことで有名なアンドレ・マリー・アンペールという人にちなんでおります。

定義では「真空中に1mの感覚で平行に置かれた無限に小さい円形の断面を有する無限に長い2本の直線状導体のそれぞれを流れ、これらの導体の1メートルにつき1000万分2ニュートン(2×10^{-7}N)の力を及ぼしあう直流の電流」とされています。つまり、これはMSK単位から関連づけて定義されていたわけですね。この力の大きさを測るには次の写真に示す電流天秤(ワット天秤)を高真空中で使います。

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また、前回のキログラムで話したように、この装置がキログラムの再定義に重要な有力候補の一つになっているわけですね。ただこれも結局天秤に分銅を用いているので少し怪しいのではないかと思われます。

 

おわりに

基本単位の国際化および7つの基本単位について触れて参りましたが、何と言っても驚きだったのが、現在のキログラムの定義がかなり原始的で物理的現象による根拠がないところでしたね。この単位もまた、科学技術の発展に基づいて再定義されることでしょう。

 

次回のネタは未定ですが、ぼちぼちと更新していく予定です。お楽しみに。

単位の深イイ話(2/3)

今回は、前回紹介した7つの基本単位のうち、最も広く使われているメートル、秒、キログラムの話をしていこうと思います。いわゆる力学で使うMSK単位系ですね。

 

秒の定義の経緯

時間の基本単位は「秒」としています。かつては、地球の自転と公転をもとにした定義、つまり、地球の一回転の86400分の1を1秒として定義されてました。これを天文時といいます。しかし、地球の自転は一定ではないことがわかり、現在では原子の振動をもとに、より高精度な定義をしております。それは、セシウム133(133 Cs)の原子の基底状態の二つの超微細準位の間の遷移に対応する放射の周期の91億9263万1770倍に等しい時間とされ、これを原子時といいます。原子時は下の写真のような原子時計を用いております。しかし、原子時と天文時とではずれが生じているので「うるう秒」を挿入することで調節しています。

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(日本標準時グループのHPより引用http://jjy.nict.go.jp/mission/page2.html )

 

メートルの定義の経緯

皆さんがよく長さの単位としてよく使うメートルという言葉ですが、ギリシャ語で「ものさし」という意味から由来されています。メートルの国際基準化のきっかけになったのは1771年フランス科学アカデミーで単位を世界共通で使うためには自然科学に根拠を持ったものにすべきという議論が起こったところから始まっております。このとき、以下の3つの案があったそうです。

 

①地球の北極から赤道までの子午線の長さの1000万分の1

②赤道の周長の4000万分の1

③北極45度の地点で半周期が一秒になる振り子の紐の長さ

 

しかし、②は赤道には海上区間や熱帯地域が多く測量が困難であること、及び③は重力が位置によって異なる点や定義をするのにわざわざ時間を使わなければならない点で却下され、①のみが残りました。

これを受けて、1795年にはフランスの天文学者ニコラ・ルイ・ド・ラカーユによる測定値を元に黄銅製のメートル原器が製造されました。その測定値はパリと同一経線上にあるフランスの北岸ダンケルクからスペイン南岸のバルセロナまでの長さを三角測量を繰り返して行なった結果から求めたものです。その4年後、正確な1mを表す国際メートル原器が製造されたのです。

しかし、測定器などの「物」を基準にした定義では、紛失や破損の恐れがあるほか、国際メートル原器と比較しなければ校正できないという問題があるわけですね。世界中どこで測っても同じになる物理現象に基づいた普遍的な定義が望ましいということですね。

そこで1983年には光速度が一定であるということを利用して光の速度を基準とする現在の定義が採用されたわけですね。というのも時間のところで説明した「秒」の正確な定義が採用されたのも大きいですね。現在1mは「1秒の299792458分の1の時間に光が真空中を伝わる距離」と定義されました。ネタバレしてしまいますが、メートルは7つの基本単位で最も新しい現在の定義なんですね。

 

キログラムの定義の経緯

現在の質量の単位はキログラムとなっております。正直グラムじゃないの?と思う方もいるかもしれません。私も実のところ、疑問に感じております。結論から言いますと、キログラムは未だに下の写真のような、国際キログラム原器という原器を使って定義をしているので、まだ正確な物理的根拠に基づいた定義がされてないわけなんですね。この計器は、白金を主成分とする合金でできた、直径高さともに39mmの円柱であり、パリ郊外のセーヴルの国際度量衡局に真空で保管されております。40個の複製がされており、日本ではNo.6が配布され、茨城県つくば市にある独立行政法人 産業技術総合研究所に保管されております。先ほども申し上げたように、原器による基準の決め方は原器そのものの紛失や破壊、変質によって信頼性失われるので問題になるんですね。

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(http://www.aist.go.jp/aist_j/aistinfo/photoarchives/pa20160608001.html 独立行政法人 産業技術総合研究所のホームページより引用)

やはり、キログラムにも時間に関係なく不変で明確な根拠が必要ですね。多分、驚かれた方もいるのではないでしょうか?

現在キログラムの基準として提案されているのは次のような例があります。

①一定個数のSi原子の質量

②金の原子を蓄積し、これを中性化するのに必要な電流による定義

③かつてプランク定数とキログラムを関連づけることでアンペアの定義に用いたワット天秤(次回やります)を用いて定義する

④光子エネルギーと等しい静止エネルギーをもつ物体の質量を1キログラムとする

他にもありますが、やはり、他の基本単位、特に電気系の単位と関連づけて定義させる方法が多いですね。

 

次回は、残り4つの基本単位の紹介をします。

 

単位の深いイイ話(1/3)

はじめに

単位は普段皆さんがなんとなく使っているものでございますが、その単位というものはどのようにして決められているかということについてこだわりを持ったことがないかと思われます。今回は主に、単位が作られるに至った経緯についてご説明します。

 

単位とは

単位は、前回も少しご紹介があったように、量と数値を測定するための基準として用いられる一定量の大きさのことを言います。もちろん、皆さんが恐れている大学の卒業要件の数値で使われる単位もこれに相当します。というのも、1単位というのはその科目を習得するために必要な勉強すべき時間を基準に決められているからなのです。そして、この単位というのは物理量の間には定義の仕方によって相互関連があるからこそ、汎用性が高いのです。例えば周波数は時間の逆数のことを指しますので、周波数を求めることは、同時に時間を求めることになるわけです。さらに、面積や体積は長さの単位から関連づけられるわけです。このように単位というのはいくつか組み立てて用いることで別の単位を作ることができるというわけです。このような単位を組立単位と言います。そして、組み立てる前の、これ以上細かくしようがない次元として独立な単位のことを基本単位と言います。

 

単位系

単位系というのは基本単位や組立単位で構成された構成された単位の定義であります。例えば電気屋であればメートル、キログラム、秒、アンペアの単位を用いるMKSA単位系というものがあります。要するに、単位系というのはそれぞれの専門分野ごとに使う単位を構成して系を決めるというわけですね。

 

単位の国際化

単位というのは、単に基準となる一定の量を決めるだけでは使い物になりません。流通や比較や知識を共有する点において国際化も免れないわけですから、世界中で標準化されてこそ初めて使い物になるわけです。そこで、単位と標準を世界中で統一するのを目的に、1875年にメートル条約を成立させました。これを受けて、国際度量衡総会(CGPM)、国際度量衡委員会(CIPM)、国際度量衡局(BIPM)という標準化するための組織を結成したのです。先に書いた順に格が上になるわけですが、度量衡局は主に研究機関のことを指します。

 

SI単位(国際単位系)

SI単位というものはあらゆる単位系の中で最も広い分野で使われるものです。つまり、「全ての国が採用し得る一つの実用的な単位制度の確立」を目的に1960年に制定されました。現在基本単位としてメートル、秒、キログラム、ケルビン、モル、カンデラ、アンペアの7つの基本単位とそれらを組み合わせた組立単位と10の整数乗倍をします接頭語(k、μなどのSI接頭語)で構成されているのですが、組立単位は全て基本単位の乗除で構成されており、一貫性のある単位系ということになります。

 

次の項では基本単位の定義についてご紹介します。

 

 

測定の深イイ話

はじめに

どうも。今回から本格的にマニアックな話をしていこうかと思います。理系で欠かせないものといえば何と言ってもやはり実験ですよね。実験といえばもちろん測ることが必須であります。現象や物事を正確に測り、測った結果を正しく評価するということが測定実験の基本であります。今回はそんな測定の基礎についてご紹介致します。

 

測定とは

普段何気なく使っている「測定」という言葉ですが、厳密に言いますと「現象から定量的な情報を取り出す操作」のことを言います。要するに、とある科学的な現象から数字を出すということです。言われてみれば当たり前かもしれませんが、単純に数字を決めるだけではありません。実際、JISによりますと、「ある量を、基準として用いる量と比較して数値または符号を用いて表すこと」とあります。ここで、「基準として用いる量」というものがメートルやキログラムとか言った単位ということになるわけです。つまり、基準量を決めてそれを単位として比較して数値を決めるというわけですね。

今後の話をわかりやすくするために次の2つの用語の説明にも入ろうと思います。測定量や測定値も言葉の意味が少し違ってくるわけですね。

測定値・・・測定によって求めた値

定量・・・測定しようとする量

これだけ聞くとイメージしにくいかもしれませんが、要は測定値というのは実際に測定器などを使ってそれが示した値のことを指し、測定量というものは我々が求めている目的の数量の事を示しています。測定量というものは、測定値や単位を元に比較されるものなんですね。このように、何らかの目的を持って結果を用いて比較や考究などをする事を計測と言います。

 

測定の種類

実は測定にはいくつか種類があって、さらに名前まであるのです。

①零位法

零位法は、測定量を、別に用意した大きさを調節できる同種類の基準量と平衡させ、両者の差を検出する計器がゼロを示すようにして、その時の基準値の大きさから測定値を知る方法です。つまり、天秤のように、両者が等しくなるように調節して、別に用意した既知の量からそのまま対象を測定するというものです。我々電気屋がよく行う例としては写真で示したようなブリッジ回路の平衡条件から未知の抵抗を出すというものです。

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ここでGは検流計なのですがこれがゼロを示す、つまり電流が流れない条件、あるいは両者をつなぐ接続点での電圧が等しい条件を導き、既知の抵抗から測定したい抵抗を測定するわけです。

例えば、R1とR2とR4が既知であったとします。R3を知りたい場合、Aの電圧とBの電圧が等しくなるような条件から導くわけです。もしこの条件が等しければ、上2つの抵抗と下2つにかかる電圧降下は並列回路で等しくなる性質、また、それぞれ直流につながっている抵抗の分圧の条件から導くことができます。このように、零位法というのは両者の差をゼロにするという調節という行為が測定する上での味噌になるわけです。

 

②偏位法

偏位法は、測定量を原因とし、その直接の結果として生じる指示値から測定量を知る方法です。要するに、測定したい量がそのまま測定器が示す値の通りの値として測定するというシンプルな方法であるです。最も簡単ですぐに終わる測定方法なのですが、致命的な欠点があり、簡単に言って仕舞えば精度の高い測定ができないという点であります。言われてみれば当たり前かもしれないですが、その通りです。この方法は測定器を構成する要素の変動を考慮しないので、それを考慮できるように測定器の校正を行う必要があります。

 

③補償法

補償法は、測定量からそれにほぼ等しい基準量を引き去り、その差の小さい量を測って測定量を知る方法です。つまり、非平衡状態の時の測定量と平衡状態の時測定量の差を知るという方法です。同様にして先ほどのブリッジ回路で考えると、もし検流計に電流が流れたとしても平衡状態と平衡状態からのズレを知れば、その時の測りたい抵抗を求めることができます。

差の小さい量を測ればいいので、結果として高精度測定することができるのです。

 

④置換法

定量と基準値を置き換えて2回の測定結果から測定量を知る方法です。つまり、あらかじめ用意しておいた1回目の測定量を基準値として正しく設定し、対象に差分を加えた2回目の測定量から正しい測定値を得るということです。天秤で例えると、1個だけの普通サイズの分銅を乗せた時の重量を基準とし、同じ天秤の皿に小さな分銅を少しだけ乗せたときの重量をはかり、小さな分銅の重量を知るという行為です。

この方法の利点としては計測器が同じであれば、計測器特有の精度を考慮しなくても良いという点があります。

 

⑤直接測定と間接測定

最後に測定の大まかな分類として直接測定と間接測定とがあります。まず、直接測定は測定量と同種の基準として用いる量と比較して行う測定です。わかりやすく言うと、同じ単位を用いているもの同士で比較を行うと言うことです。これに対して、間接測定は測定量の一定の関係にある、いくつかの要素の量について測量を行って、それらの要素の測定値から関係式を使って測定量を導き出す方法です。つまり、測定対象が測定器と同じ単位でなくとも、関係式さえ使えば測定量を知ることができるということです。我々電気屋がよくやるのは抵抗測定でオームの法則使うという点です。抵抗を測定したい時に、直接テスターで抵抗を測るのではなく、電流計や電圧計を用いてそれらの計測値からオームの法則を使って計算して抵抗値を知るという方法です。

 

おわりに

というわけで、理系の人なら当たり前の感覚で行なっている測定の薀蓄話を長々してしまいましたが、当たり前の感覚を完全に捨てるとこのように深い話になっていくわけですね。もちろん、当たり前のことができるには越したことはないですが、たまには当たり前の感覚を捨てるというのもいかがでしょうか?次回はもう一つ、測定するのに用いる単位の深イイ話をしていこうと思います。ありがとうございました!

電気系の基礎科目について

はじめに

どうも、こんにちは。前回のブログで、電気系専攻である私の生き方について書いたのですが、その中で電気系の基礎の難易度が理系の分野の中で屈指のレベルだとかなり誇張して書いた気がするんですが、今回はなぜこんなに誇張するほど難しいと言い張れるかを電気系の基礎科目となるのはどういう科目かという話を踏まえながらお話していこうと思います。

 

電気系の基礎となる科目

高難易度の理由を説明する前に、電気系の専門基礎となる科目についてご紹介致します。

 

①数学

電気系が学ぶ数学はいわゆる電気数学と呼ばれるものなのですが、主に、微分積分学線形代数学(ベクトル演算、行列式)、微分積分方程式複素関数フーリエ級数ラプラス変換がありますね。どの科目でも共通して言えることは幾何学的にイメージすべきものが高校よりも何倍も増えるうえに、いずれもイメージがしづらいところなんですね。もちろん大学の数学は難易度が違うので言われてみれば当然なのですが、その通りです。数学は、幾何学的なイメージがどれも必須でそれが出来てようやく理解が深まるものなんです。

例えば微分なんかは、高校でやった勾配だけではなくて発散や回転の種類もあるのでそれらの幾何学的なイメージもできるようにならなくてはいけないのです。

実はこのイメージができるかどうかによって次から紹介する科目を乗り越えられるかが決まってくるわけです。

 

電磁気学

電磁気学は電気的性質を考える上で、最も原点沿って考える科目となっており、次に紹介する電気回路よりも優先度が高い科目だと思います。具体的には、電流と電界と電圧はもともとどういう風にして発生するものであるか、そして、電気回路を構成する基本的な素子、つまり、抵抗、コイル、コンデンサの動作の振る舞い方を幾何学的に考えたりするなどというものがございます。これらは主に数学のベクトルやそれの微分積分の演算をよく用いるので数学がいかに重要かを思い知らされるはずです。

 

③電気回路

電気回路はいわゆる回路解析であり、具体的には抵抗、コイル、コンデンサなどの素子で繋がった様々な回路を数式で表して解くものです。

電磁気学はベクトルの微積分学をよく多用しますが、こちらは微積分方程式、複素関数線型代数学、ラプラス変換など多用する数学の範囲が広く、これらをうまいこと理解していかなければなりません。中には、トランジスタダイオードなどの半導体素子を使った回路解析などもありますが、これらは電子回路という分類に入ることがあります。

 

④現代物理学

これは、いわゆる相対性理論以降の物理学と考えても良いでしょう。普通の物理学と何が違うかといえば、我々が高校の時に習った物理学はいわゆる古典物理学であり、時間と空間が相互に独立で絶対的な概念であるとし、観測対象の質量や状態の変化がないものとして考えておりましたが、現代物理学は簡単に言って仕舞えば、それらを覆して、それらの変化を考慮したものを扱っております。いわゆる、量子力学ですね。この話だけ聞けば、電気系と関係ないかと思われるかもしれませんが、実は電気系の話はほぼ全てこの現代物理学が元になっており、現代の電気工学、電子工学の技術はこの学問の元でもあります。

 

基礎が屈指の高難易度の理由

もう科目の紹介をしただけでなんとなく察してる方もいるのではないかと思いますが、なぜ高難易度かをこのタイミングで説明させていただくと

①すぐに幾何学的にイメージがしづらいものが多い

②大学で習う数学で頭に入れるべき量がかなり多い

③高校物理のやり方ではうまくいかないものが多い

という理由があります。①だけなら理系の分野ならおそらくどこでも言えると思われますが、電気系ならではの難関となるのがやはり②かと思われます。③についてもこれら2つの理由に全く繋がりがないかといえばそうではありません。というのも、高校で扱う物理学というものは、力学にしても熱力学にしても高校の範囲までに習う数学を元にしてやり方を教わるものなのでやはり高校数学まででのやり方だと限界というものがあります。

 

これらの高難易度を突破するには

この話だけを聞けば、電気系を進むのに辟易するのも無理はないですし勉強嫌いの引き金になってしまうのではないかと思われます。かく言う私も、まだまだ浅学の身でこれらの復習に追われているところです。

しかし、これらを容易くこなせるようになるためには電気系の雑誌(電気計算、電気と工事、トランジスタ技術など)などに触れて読んで興味を強く持ったり、実物を見て実態などをよく知ることが重要だと思います。これは前回の最後の方でも同じようなことを説明したことなのですが、やはり強い興味があるかないかでは容易くイメージができるかどうかが全く違ってきています。

是非是非、興味という強い原動力を持って取り組んでいきましょう。