ローゼンブラックのさらなるつぶやき

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雷対策の話(避雷器編)

ごあいさつ

こんばんは、ブログの更新はほぼ1ヶ月ぶりですかね。この空白の1ヶ月間は院試と学会の準備に追われておりましたが、ようやくひと段落が付きました。これにより、投稿を楽しみにしてくださった皆様には久々の投稿になってしまったことを深くお詫び申し上げます。まぁ、ホントはここでお詫びしてもしょうがないんですけどね。

 

今日のテーマ

さて、長い前置きは置いといて、今回も電気工学ネタを呟いていきたいと思います。前回は雷の恐ろしさとともに、落雷対策するのに必要なそもそもの雷の基礎知識を養うために、落雷のメカニズムを紹介しました。しかし、高度情報化社会の今だからこそ、雷から機器・設備を保護することが必須になってきます。そこで今回は落雷に対処する方法の一つを具体的に紹介しようと思います。

 

避雷器

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避雷器はある値以上の電圧がかかると抵抗値が小さくなって大電流を流すことで過電圧を抑制するという仕組みになっております。最も身近なところですと、写真の電柱の最上部に付けられていますよね。避雷器の種類には、高圧用のものと低圧・弱電用のものがございますが、主に前者は電力送電設備などを保護して停電事故の発生を防ぐもので、後者は身近で使われている電気電子機器・通信機器などの保護をする役割を持つものですが、今回は避雷器についてわかりやすくご紹介するため、高圧用について触れようと思います。

 

1.避雷器の構造

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避雷器の構造は、図のようにセラミックス半導体素子(わかりやすく言えば抵抗器みたいなものですね)として酸化亜鉛(ZnO)を主成分として何枚も重ねたものを支持棒と支持板を用いて締め付けられたものを一つの単位として制作し、それがコイルばねで支持する構造となっております。

 

2.避雷器の要求事項

避雷器は、電力系統に雷などの過電圧が発生したときに速やかに過電圧を抑制し、雷電流を大地に流した後、自力で絶縁状態に回復させなければなりません。その必要条件は、

①絶縁性能

②保護性能

③動作責務能力

の3つです。正直、想像つきにくいと思うのでもう軽く説明いたします。つまり、常時の電圧に耐え、過電圧を一定の値まで低減し重要な機器を保護でき、かつ過電圧消滅後も速やかに常時の状態(絶縁状態)に復帰できることが必要となってくるわけです。これは、抵抗器の素材にとっては常時は絶縁体であるが、緊急時には導体として働くことができることが求められるわけですね。

 

3.避雷器の電流-電圧特性

現在よく用いられているのはZnO素子を用いた避雷器ですが、かつては、SiCの素子を用いた避雷器を用いておりました。そこでSiCとZnO素子のそれぞれの特性をグラフにしたものが下の図です。

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SiCは電流を上げると、電圧も徐々に上がってしまいますので、連続使用すると熱破壊が起こってしまうので、直列ギャップを用いて絶縁させる必要があるわけですね。一方、ZnOはある一定以上の電流が流れると、ある電圧まででほとんど停滞することがわかりますね。図のように非線形としてあらわれるということは、先程申し上げた通り、導体として働いているわけですね。ただ、ZnO避雷器には当初ギャップがなかったので素子の寿命を評価する必要があるわけですね。現在では経験的な値でしかわかっておりません。

 

4.避雷器の高性能化

 もちろん、先程の図は高性能であるということを証明するものではありません。電気的な性能だけでなく、壊れにくく安全性が高いことも必要条件となっております。そこで、高性能化させるには次の方法があります。

①ZnO素子に添加物の濃度を制御

②ZnO素子の代わりにポリマー避雷器を用いる

まず、①について説明します。添加物というのは要するに絶縁物質のことです。この量を制御することで、素子に流れるサージ電流を増加させ、復帰を早めることができます。ただ、増加させるだけでなく、電流が素子のどの場所でも流れやすいように均等化も考えていかなければなりません。

②のポリマー避雷器は非常に軽量なだけでなく耐汚損性、耐震性、放圧時の安全性に優れた構造となっているので今後の主流になっていくであろう避雷器になっております。

 

おわりに

久々の更新でした。落雷の頻度が最も多い時期は過ぎて行きました。とはいえ、前回もご紹介したように湿度などの条件が揃えばいつでも起こりうるのです。そこでこの回では身近なところでどう対策しているがという話をしていきましたが、次回も身近なところで用いる雷対策機器を紹介しようと思います。

 

参考文献

電気計算 2016年8月号」電気書院(写真以外の図は全てここから抜粋)

「よくわかる送配電工学」田辺茂著 電気書院

参考文献について

どうも。毎回参考文献を忘れてしまってます。

今までの電気工学ネタは私が学部の授業で学んできたことをもとに書いてますが、参考図書もあるので載せます。

 

①「単位の深イイ話」と「電気磁気学で用いる単位の話」

「電気電子基礎計測」(オーム社)

②「雷のしくみ」

「よくわかる送配電工学」(電気書院)

 

今後は毎回話の終わりごとに参考文献を載せるよう気をつけて参ります。どうも、すみません。

雷のしくみ

はじめに

お久しぶりです。高度情報化社会の進展により様々な電気設備や電子機器が開発されるようになり、今となってはそれらは我々の生活では欠かせないものになりました。ところが、落雷によって電気設備や送配電系統に影響を及ぼすと、生活や産業活動にも累が及ぶのです。そもそも、日常で使う電子機器自体、小さなエネルギーで使えるというのがウリですから雷のような大電圧に対応できる訳がないんです。

つまり、高度情報化社会の発展に比例して雷害によるリスクも高まるのです。実際、下のグラフのように最近になって増加しているということがわかります。

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(昭電のHPより 2010年度までの落雷被害のデータ)

落雷対策のためには、日常でも用いる電気設備や電子機器の周りに避雷器を設置するなどの対策が必要ですが、それ以前に、今回は落雷はどのような仕組みで起こるのか、そしてその被害はどのような見ていこうと思います。

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 (関西東邦産業株式会社のHPより)

 

落雷発生のメカニズム

雷は、図のように雲の中の氷の粒や霰がこすり合って静電気を帯び、内部に電荷を帯びた雲(雷雲)によって発生するのですが、雷雲の下部は負電荷を帯びます。静電誘導によって帯びてしまいます。これによって雲と地面の間に平板コンデンサのような構造ができてしまうわけですね。十分に電荷がたまり、過電圧が加わると蓄えられなくなり、絶縁破壊を起こして放電してしまいます。これが落雷です。

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(佐賀県教育センターの「雷発生のしくみ」のHPの図から改造)

この雷雲は、次にあげる3つの条件が揃えば、季節や場所に関係なく発生する可能性があります。

①空気の移動速度が速い

②空気中に多量の水蒸気が含まれている

③上空の気温が-10度〜−20度程度である。

先述の通り、雷雲は水滴や氷が擦り合わせて電気を帯びるのですが、上昇気流などの激しい大気の移動によって電離します。だから、これらの条件が揃ってしまうと落雷の危険性があるわけですね。

 

冬季雷のメカニズム

一般的な雷雲は、前の図のように縦長でしたが、実は世界ではノルウェー西岸と日本海側でのみ見られる珍しい雷現象として冬季雷というものがあります。通常の雷は先述の通り、上昇気流に伴うものですが、冬季は上昇気流が弱いものの、もともと図のように高度が低く(300〜500m程度)季節風によって雲が横長の形になっていると考えられます。このため、日本海側でのこの落雷の半数は、上方に溜まった正電荷が雨や雪によって直接陸に向かって放電するという仕組みになっています。

冬季雷で恐ろしいのは頻度は少ないものの、通常の雷の約100倍程のエネルギーを持つ点です。

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夏季雷

日本では群馬県や栃木県などで起きやすい夏季雷は、雲から地面への放電(ストリーマと言います)の進展が地上まで到達すると、地上から雲の下部への主放電が起きます。これが稲妻です。主放電の速度は光速の10〜50%、電流の大きさは数万〜20万A、電圧は、雲と地面の間が平板コンデンサのような仕組みになるのでその間の空気中の絶縁強度や地面までの長さによって左右されますが、およそ数十万〜10億V程度になります。

つまり、この落雷は単に上から下に向かっていく一方的なものではなく、地上との相互関係で成立するものだということがわかりますね。

 

雷による被害

雷による被害は、次のに紹介する3つの現象があります。主に送電線などのいわゆる、電力系統への被害です。

 

①直撃雷

直撃雷は、電力線に直接雷が放電するものです。このとき、電力線の電位が上昇するのですが、これが鉄塔などの大地電位にある指示物から電線を絶縁状態を保持する碍子(がいし)やアークホーンの耐力を上回ると、鉄塔に火花放電が起こってしまいます。これをフラッシオーバと言います。それ以下であれば、進行波となって電線の両方向に伝搬します。

 

②誘導雷

雷による放電が雷雲同士、雷雲と大地あるいは電線の間に生じたとき、当然、電線に電磁誘導による誘導電流が生じます。これにより、静電誘導の束縛が解かれ、雷雲の電荷と電力線の電荷が拡散していく現象を誘導雷と言います。このことから、直撃雷と比べると発生する電圧は高くないですが、発生頻度は高く比較的広範囲にまで被害が及ぶので怖いですね。

 

③逆フラッシオーバ

鉄塔や架空地線に落雷すると、鉄塔から大地に大電流が流れ、その時のインピーダンス降下により、鉄塔側が高電位となり、鉄塔から電線にフラッシオーバしてしまう現象を逆フラッシオーバと言います。

 

おわりに

落雷が起こっただけで、すぐに怖がるという方もいるかと思いますが、落雷のメカニズムや落雷後の影響の知識があればどのように雷対策すれば良いかというのが見えてきたんじゃないでしょうか?

 

次回は雷対策についての話をするつもりです。

ありがとうございました。

電気磁気学で用いる単位の話(2/2)

ではでは、前回に引き続き、電気系で用いる単位について残りをご紹介致します。

 

コンデンサの静電容量

抵抗以外の電気素子として、コンデンサというものがあります。

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コンデンサの中身は上図のように導体平板2枚を平行に配置し、その間に電圧を加えると電界が発生し、各平板に電荷が蓄積されるという仕組みになっております。これら電荷を貯めたり放出したりすることができるのです。そしてコンデンサの持つ電荷を蓄積できる量を静電容量と言います。静電容量は電極、つまり導体平板の面積と電極間の物質固有の誘電率に比例し、平板間の長さに反比例します。単位はファラッド[F]を用います。

定義としては、「1[F]は1[C]の電気量を充電した時に1V生じる静電容量」としています。SI基本単位のみを用いて表すと、

F=m^{-2}kg^{-1}s^4A^{2}

という単位で表されます。

実際に電子工作などで用いる素子はμF単位と、とても小さい値の静電容量のものが使われます。

ここで、平行平板コンデンサは正負の極性関係なく使うことができますが、写真のような電解コンデンサは正負の極性が決まっているので注意しなければなりません。写真のリード線が長い方に正の電圧がかかるように用います。

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磁気に関する法則や単位

最後に磁気に関する単位について紹介します。ここで話をわかりやすくするために、単位を紹介する前に磁気に関する法則の紹介を行いたいと思います。

アンペールの法則

磁界は、下図のように電流を流す磁界が渦巻き状に発生するのですが、渦巻く方向は、電流の向きを右ねじの進む方向として右ねじの回る向きになります。これを右ねじの法則と言います。

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この時に発生する磁界の大きさをHとし、電流をI、電流からの距離をrとすると、

H= \frac{I}{2{\pi}r}

となります。これをアンペールの法則と言います。ただし、この式はあくまで特別な場合であって、正式なアンペールの法則は「任意の閉曲線を設けたとき、その閉曲線上でできる磁界の強さの線積分値は、その閉曲線内を貫く電流に等しい」としています。上の図だと半径がrの円周を閉曲線としているわけですね。

 

②電磁誘導

磁石によって作られる磁力線を束にしたものを磁束と言います。図のように磁石を動かすと、コイル内を貫く磁束、いわゆる鎖交磁束が変化するのでそれによって電圧が生じます。これを電磁誘導と言います。この時に発生する電圧を誘導起電力と言いますが、その大きさは鎖交磁束の変化分に比例します。これがファラデーの電磁誘導の法則です。そして誘導起電力にも向きがあり、磁束の変化を妨げるように発生するのです。

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③磁束

磁束にも単位があり、ウェーバー[Wb]を用います。定義では、「1回巻きの閉回路と鎖交する磁束が一様に減少して1s後に消滅するときその閉回路に1V生じさせる磁束」としています。これは、先程のファラデーの誘導起電力から定義されます。SI基本単位を組み立てて書くと、

Wb=kgm^2s^{-2}A^{-1}

となるわけですね。

 

④磁束密度

密度がついてるからわかりますよね?磁束の単位面積当たりの面密度です。単位はテスラ[T]ですね。Fate/Grand Orderをやっている方ならご存知かもしれませんが、交流電流の発明者、ニコラ・テスラから来ています。直流側のエジソンと交流側のテスラの電流戦争は有名ですよね。

話が脱線してしまいましたが、先程のウェーバーTm^2と書くことができますね。

 

⑤インダクタンス

先程のファラデーの電磁誘導の法則で、鎖交磁束が変化すると誘導起電力も磁束の変化を妨げる方向に変化するという説明をしました。これはコイルの巻線電流を変化させることでも同じ働きをします。巻線電流を変化させるともちろん鎖交磁束も比例して変化します。要するに、誘導起電力の変化分は巻線電流の変化に比例するわけです。この時の誘導起電力は比例定数を用いて

V=-L\frac{dI}{dt}

となるわけです。この比例定数Lを自己インダクタンスといいます。

自己があるということはコイルが二つ以上の場合もあると勘付きますね?

磁気的に結合した2つの巻線のうち、一方の電流を変化させるともう一方の巻線に誘導起電力が生じます。一方の巻線の番号を1、もう一方を2とすると、

V_2=-M \frac{dI_1}{dt}

です。この比例定数Mを相互インダクタンスと言います。それぞれの自己インダクタンスとの関係は次の関係があります。

M=k \sqrt{L_1L_2}

kを結合定数と言い、0と1の間の値を取ります。

 

ここで、インダクタンスにも単位があり、ヘンリー[H]を用います。1Hは、「毎秒1Aの割合で一様に変化する電流が流れるときに1Vの起電力を生ずるインダクタンス」としています。

 

おわりに

電気の単位について紹介しましたが如何でしょうか?前半は日常生活で割と馴染みの深い単位でしたが、今回はあまり馴染みがない単位でしたね。ただ、どの単位にも共通して言えるのが発明者の名前から取っているっていうことでますます馴染みがないかと思われますが、是非是非、電子工作をを扱う趣味を持っている方などには知っておいてほしい単位ですね。

 

次回は考え中です。ありがとうございました。

 

電気磁気学で用いる単位の話(1/2)

はじめに

3日ぶりですね。現実には、分野によって前回紹介したSI基本単位を組み合わせた組立単位がよく用いられております。そこで今回は、私が専門としている電気系で使われる単位についてご紹介したいと思います。

 

電流と電荷

SI単位系ではこの電流、つまりアンペアが基本単位になっています。そのほかの電圧、抵抗、電荷量などの単位についてはこのアンペアから導かれるわけです。今回は、アンペアの定義は前回紹介したので割愛しますが、電流はいかなるものかついて説明させていただきます。電流は電荷が移動する流れのことを言います。

ここで、電荷という言葉が出て来たので少しご説明いたします。あらゆる物質や原子、そして原子の周りにいる電子などが帯びている電気の量のことを指します。電荷には正負二つの状態が存在するのですが、物質の定常状態では、その量が等しく中性を保たれます。しかし、何らかの原因でその量のバランスが崩れると、その物質には帯電が起きてしまいます。

電流の方向は電荷の移動方向と定義されているので、電子は負電荷なので流れる方向は電流と逆方向になります。

そして、電荷にもクーロン[C]という単位がつきます。そもそも電流というのは、下図のようにある導体断面を1秒間に1クーロン[C]の電荷が通過した量を1[A]という感じで考えているんですが、SI単位的には逆で、「導体断面を1アンペア[A]が流れたとき、1秒間に運ばれる電気量を1クーロン[C]」としています。つまり、先に電流の大きさを測ってから電荷がわかるんですね。

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電流の向き

 

電圧

次に、電圧についてご紹介します。電圧といえば電流を流そうとする電圧の単位は皆さんご存知ですよね、ボルト[V]です。由来は、2枚の金属板と電解質の水溶液から成る一次電池、ボルタ電池を発明したヴォルタという人から来ています。この定義は、「1Vは1Aの電流が流れる導体の2点間において消費される電力が1Wであるとかのその2点間の電圧」とされています。ここで1Wがありますから、いわゆるMKSA単位系の基本単位を全て使うことになります。ボルトを全て基本単位に直して書くと、(電力)=(電流)×(電圧)の関係先を使うと、Wはm^2kgs^{-2}ですから、

V=m^2kgs^{-2}A^{-1}

となるわけですね。

 

電気抵抗

多分、これも義務教育ですでにやっているかと思われます。いわゆるオームの法則で、電圧を電流で割った値が抵抗ですよね。では抵抗というものはもともと何であるかについて見ていきましょう。

どの物質にも電圧を加えると導体内に電界、つまり電気的な力が発生します。それにより、電荷が力を受けて移動し電流が流れます。この電荷をキャリアと言います。そして、移動キャリアの速度は、その段階の大きさに比例するのですが、その時の電流はキャリアの数や物質固有のキャリアの移動のし易さによって決まってくるわけですね。これが抵抗になるのです。

抵抗のSI的定義では「1Ωは、1Aの電流が流れる導体2点間の電圧が1Vである時のその2点間の抵抗」としています。SI基本単位で表すと、

Ω=m^2kgs^{-3}A^{-2}

となります。

 

電力

電気の世界でも、電力として、力学と同じワット[W]を用います。同じ単位を用いるということは電力と力学で用いるワットは関連性があるのか?という疑問を持っている方もいらっしゃるかと思います。おそらく、先程の電圧の紹介しているあたりで待った方もいらっしゃるかと思います。ここで単位の話をする前に電気エネルギーと運動エネルギーの関係について話します。

電力というのは簡単に言うと電気エネルギーによってなされる仕事のことを指します。電界によって力を受けた、動き回れる電子(以下、自由電子)は図のように、導体中を構成している原子と衝突しながら流れていきます。

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この時、構成原子に力学的なエネルギーを受けて振動し、その分だけ自由電子の運動エネルギーは失われるのです。この失われた分は熱に変換されてしまいます。このような熱をジュール熱と言います。こうして見ると、同じワット[W]を用いる理由がわかりますね。

なので、1Wは1Vの電圧をかけた時に1Aの電流が流れたときの電力という感覚でも間違いはないのですが、定義としては「1秒あたりに・変換・使用・消費されているジュールで表したエネルギーの率」としています。電力はつまり単位時間あたりのエネルギーの発生量のことを言うんですね。

 

次回はただの抵抗だけでなく、いわゆるコンデンサやコイルなどの電気素子に用いる単位の話をします。

 

単位の深イイ話(3/3)

どうも。早速ですが前回のMSK単位系について書いた記事でお気に入り登録された方が一人いらっしゃったようです。ありがとうございます!

今回は残りの4つの基本単位について紹介いたします。

 

カンデラの定義

まず光度というのは、点状の光源からある方向へ放射される光の明るさを言います。そんな光度の基本単位はカンデラ[cd]が用いられます。由来はラテン語でキャンドルとカンテラと同じ語源です。これも、実は国際基準化されているわけですね。というのも、人間が感じる光の明るさというものは、もちろん十人十色ですからね。

現在のカンデラは「周波数540×10^{12}Hzの単色反射を放出し、所定の方向におけるその放射強度が1/683ワット毎ステラジアン[sr]である光源の、その方向における光度」と定義されております。この定義で示した周波数は緑色近くの可視光で人間の目にとって最も視覚の感度が高いところなんですね。ここで、ステラジアンという単位についてお話しします。下図に示すように、ステラジアンは立体角に関する単位で球の半径rの平方、つまり一辺がrの正方形と等しい面積の部分の中心に対する立体角です。立体角についても補足しましょう。簡単にいうと今まで単に「角度」と言っていたものは平面角と言って長さのような概念を示してましたが、立体角の場合は面積のようなものと考えるとわかりやすいでしょう。

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立体角ステラジアン

 

 

モルの定義

モル[mol]といえば化学における現象を理解するのによく用いられていますよね。

定義では「0.012キログラム(12グラム)の炭素12の中に存在する原子の数と等しい構成要素を含む系の物質量」とされています。1971年に定義されたものなので現在使われている基本単位の中では最も新しく生まれた基本単位なんですね(定義に限ってはメートルが最新)。

 

ケルビンの定義

熱力学温度、いわゆる温度の基本単位はケルビン[K]になっております。「1ケルビンを水の三重点の熱力学温度(0.01℃)の1/273.16倍とする」と定義されています。表記に関して注意しておきますが、ケルビンには⚪︎や度は付けないことになっています。一般的に用いられているセルシウス度C(摂氏)とは次の関係があります。

C=K-273.15

それからこれは皆さんには馴染みはないかもしれないですが、気候の分野で使われるファーレンハイト度F(華氏)ではKと次のような関係があります。

F=9/5K-459.67

 

 アンペアの定義

さぁ、いよいよ我々電気屋のお待ちかねです。電気の基本単位といえばもちろんアンペア[A]です。由来は、これは電磁気の話でも出てくるんですが、電流の周りに発生する磁場との関係を導いたアンペールの法則を発見したことで有名なアンドレ・マリー・アンペールという人にちなんでおります。

定義では「真空中に1mの感覚で平行に置かれた無限に小さい円形の断面を有する無限に長い2本の直線状導体のそれぞれを流れ、これらの導体の1メートルにつき1000万分2ニュートン(2×10^{-7}N)の力を及ぼしあう直流の電流」とされています。つまり、これはMSK単位から関連づけて定義されていたわけですね。この力の大きさを測るには次の写真に示す電流天秤(ワット天秤)を高真空中で使います。

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また、前回のキログラムで話したように、この装置がキログラムの再定義に重要な有力候補の一つになっているわけですね。ただこれも結局天秤に分銅を用いているので少し怪しいのではないかと思われます。

 

おわりに

基本単位の国際化および7つの基本単位について触れて参りましたが、何と言っても驚きだったのが、現在のキログラムの定義がかなり原始的で物理的現象による根拠がないところでしたね。この単位もまた、科学技術の発展に基づいて再定義されることでしょう。

 

次回のネタは未定ですが、ぼちぼちと更新していく予定です。お楽しみに。

単位の深イイ話(2/3)

今回は、前回紹介した7つの基本単位のうち、最も広く使われているメートル、秒、キログラムの話をしていこうと思います。いわゆる力学で使うMSK単位系ですね。

 

秒の定義の経緯

時間の基本単位は「秒」としています。かつては、地球の自転と公転をもとにした定義、つまり、地球の一回転の86400分の1を1秒として定義されてました。これを天文時といいます。しかし、地球の自転は一定ではないことがわかり、現在では原子の振動をもとに、より高精度な定義をしております。それは、セシウム133(133 Cs)の原子の基底状態の二つの超微細準位の間の遷移に対応する放射の周期の91億9263万1770倍に等しい時間とされ、これを原子時といいます。原子時は下の写真のような原子時計を用いております。しかし、原子時と天文時とではずれが生じているので「うるう秒」を挿入することで調節しています。

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(日本標準時グループのHPより引用http://jjy.nict.go.jp/mission/page2.html )

 

メートルの定義の経緯

皆さんがよく長さの単位としてよく使うメートルという言葉ですが、ギリシャ語で「ものさし」という意味から由来されています。メートルの国際基準化のきっかけになったのは1771年フランス科学アカデミーで単位を世界共通で使うためには自然科学に根拠を持ったものにすべきという議論が起こったところから始まっております。このとき、以下の3つの案があったそうです。

 

①地球の北極から赤道までの子午線の長さの1000万分の1

②赤道の周長の4000万分の1

③北極45度の地点で半周期が一秒になる振り子の紐の長さ

 

しかし、②は赤道には海上区間や熱帯地域が多く測量が困難であること、及び③は重力が位置によって異なる点や定義をするのにわざわざ時間を使わなければならない点で却下され、①のみが残りました。

これを受けて、1795年にはフランスの天文学者ニコラ・ルイ・ド・ラカーユによる測定値を元に黄銅製のメートル原器が製造されました。その測定値はパリと同一経線上にあるフランスの北岸ダンケルクからスペイン南岸のバルセロナまでの長さを三角測量を繰り返して行なった結果から求めたものです。その4年後、正確な1mを表す国際メートル原器が製造されたのです。

しかし、測定器などの「物」を基準にした定義では、紛失や破損の恐れがあるほか、国際メートル原器と比較しなければ校正できないという問題があるわけですね。世界中どこで測っても同じになる物理現象に基づいた普遍的な定義が望ましいということですね。

そこで1983年には光速度が一定であるということを利用して光の速度を基準とする現在の定義が採用されたわけですね。というのも時間のところで説明した「秒」の正確な定義が採用されたのも大きいですね。現在1mは「1秒の299792458分の1の時間に光が真空中を伝わる距離」と定義されました。ネタバレしてしまいますが、メートルは7つの基本単位で最も新しい現在の定義なんですね。

 

キログラムの定義の経緯

現在の質量の単位はキログラムとなっております。正直グラムじゃないの?と思う方もいるかもしれません。私も実のところ、疑問に感じております。結論から言いますと、キログラムは未だに下の写真のような、国際キログラム原器という原器を使って定義をしているので、まだ正確な物理的根拠に基づいた定義がされてないわけなんですね。この計器は、白金を主成分とする合金でできた、直径高さともに39mmの円柱であり、パリ郊外のセーヴルの国際度量衡局に真空で保管されております。40個の複製がされており、日本ではNo.6が配布され、茨城県つくば市にある独立行政法人 産業技術総合研究所に保管されております。先ほども申し上げたように、原器による基準の決め方は原器そのものの紛失や破壊、変質によって信頼性失われるので問題になるんですね。

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(http://www.aist.go.jp/aist_j/aistinfo/photoarchives/pa20160608001.html 独立行政法人 産業技術総合研究所のホームページより引用)

やはり、キログラムにも時間に関係なく不変で明確な根拠が必要ですね。多分、驚かれた方もいるのではないでしょうか?

現在キログラムの基準として提案されているのは次のような例があります。

①一定個数のSi原子の質量

②金の原子を蓄積し、これを中性化するのに必要な電流による定義

③かつてプランク定数とキログラムを関連づけることでアンペアの定義に用いたワット天秤(次回やります)を用いて定義する

④光子エネルギーと等しい静止エネルギーをもつ物体の質量を1キログラムとする

他にもありますが、やはり、他の基本単位、特に電気系の単位と関連づけて定義させる方法が多いですね。

 

次回は、残り4つの基本単位の紹介をします。